1 ”元”ヤリチン”現”童貞の話① | “元”ヤリチン”現”童貞の話

[chapter:― 登場人物紹介 ―]

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[chapter:― プロローグ ― (モテ期終焉)]
~加藤陽太の回想~

正直俺はモテる。……いや、モテて“いた”。
中1ではすでに180㎝を超える身長にボディビルダーと比べても見劣りしないバルクのある体躯。
顔は自分で言うのもなんだが男らしさとあどけなさが残るさわやかな顔立ちで、歳相応には見られなかったものの、そこらの“イケメン風”芸能人なんかには負けない、目鼻立ちの整った顔をしていた。

当然、周りにいた女もこんな俺を放っておくわけがなかった。
ゴリマッチョはモテないだとか巨根神話を信じているのは男だけだとかいうやつもいたが結局のところマッチョ好きな女なんていくらでも居たし、自慢のモッコリを見せつければ最初は冗談半分の好奇心風を装った女とHできることも少なくなかった。

しかしそんな俺の“モテ期”は、中2の冬に受験勉強を本格的に始めた頃にあっけなく終わってしまった。
貢いでくれる女はいくらでもいたし将来に対する不安なんて抱く歳でもなかったこともあって、全く勉強に対し関心を持たなかった俺を心配した親に“それなりの高校を”と説得され、渋々受験勉強を始めることに…。
毎日のように会っていたセフレ達と会うのをやめ、強すぎる性欲をオナニーと筋トレでごまかしながら受験勉強に励む日々。

合格通知をもらい、やっとハメを外せると喜び勇んで約1年間連絡を取っていなかったセフレに連絡。
これから毎日ハメ倒そうと思っていたのだが……入らない。
別のセフレを呼んで試すも軒並み入らず……。
とはいえ、
モテ期だった中1・2年の頃でも普通のやつらでいう“巨根”って域は超えていたが、30代前後や出産経験者に絞って時間をかけて慣らしてやればなんとか挿入出来ていたこともあって、この時はまだ、

『しばらく会わないうちに“縮んだ”だけだろう。
 また俺じゃなきゃイケないように“俺の形”にしてやればいいだけの事』

なんてイキった考えでいたのだが、いくら慣らしても一向に入らない。
それどころか、見ただけで「無理」だの「グロい」だの……
気付けばモテ期にいたセフレはおろか、新規開拓も含め誰一人としてセフレがいない状況になっていた。

ここで初めて我に返った。

『変わったのは相手ではなく自分の方なのでは?』

と。
毎日目にしていて気付かなかったが体もチンコも1年前と比べると明らかにデカくなっている。
中3末のこの時点で身長は190台、帰宅部でろくな運動もしてないのにビルダー並みだった体は、受験期間(禁欲生活)で性欲を抑えるために鍛えたせいでナチュラルビルダーといっても信じてはもらえない程でかくなった。
そして、そんな体躯の太い手首以上の太さ、デカイ手で3握りしても隠し切れない長さの凶悪なチンコ。
冷静に考えれば、フィストが出来ても入らないであろうこのチンコが入る女がいるとは思えなかった。

高校に入ってもこの状況は変わらなかった。
いや、それどころか益々事態は悪化していった。
身長も相まって凶悪的な体だったせいで入学早々“怖い人”というレッテル貼り。
環境が人を変えるのか、それに応えるように服装や仕草、表情もヤンキー化し、一層近寄りがたい雰囲気に。
時代錯誤なヤンキーがまともにモテる訳もなく、セックスどころか高校内で近づく女すらいない。
それでも周りがそうであるようにまだまだ成長期の体は、自分の意思とは関係なく身長も筋肉も顔立ちも、さらには体毛もどんどんその性徴を増していく。
もちろん、チンコも例外ではなく……。

そして現在。
モテ期が終了してすっかり女とは無縁の生活を送るようになって8年が経ち、モテ期があったことすら嘘かと思うほど、自分に自信を無くしていた。
まともな恋愛観や貞操観念を育むはずの高校の3年間を棒に振るい卑屈になったせいで歪んだ女性観。
それを引きずって過ごした大学2年間……。
男として憧れの頂点から突き落とされた現実は、一人の人間を腐らせるには十分過ぎた。

― プロローグ ― (モテ期終焉) 了

[chapter:― 転機 ― (気まぐれ、または気の迷い)]

「はぁ~クッソ……ヤリてぇ。」

無意識だった。
“穴”に対する執着は消えていたが、それでもあまりに人肌に飢え過ぎて漏れ出た言葉。

「やっぱりこのまま一人で過ごすのはもう限界。でも……」

20歳を過ぎ今でも状況が悪化していく一方だったが大学3年になり新生活が始まったからか、
今の状況を打破したい気持ちが増したのかもしれない。
モテ期の時のように黙っていたって向こうから人が寄ってくることなんてないことはこの8年で十分自覚していた。
勿論今まで何もしていなかったわけではなく、自分なりに散々出会いは求めてきた。
学校内外問わず、リアルもネットも問わず。
“巨根と巨根好き淑女の出会い掲示板”をチェックするのは就寝前の日々の日課だった。
勿論見るだけじゃなく、これはと思った女には片っ端からメールを送った。
殆どの場合は長さを言っても信じてもらえず危ないやつだと思われて会ってもらえない。
なんとかリアルに漕ぎつけた相手であっても、人間離れしたこの巨体にドン引きし、そこを乗り越えた数少ない相手でもアソコの凶悪さを自覚した中3の時よりさらにデカくなり過ぎたチンコを目の当たりにすると、時には罵声を浴びせ去っていった。

「どうせうまくいくわけねぇし。」

そうは言いながらもすっかり日課となった掲示板チェック。
メッセージを送る気すら失せて久しいが、斜め読みしながらスクロールしていくとひとつの書き込みが目に留まった。
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「んだよ……男が書き込むなよ……」

口ではそう悪態をつきつつも、なぜかこの投稿が気になる。

『コンプレックスになるほどか……確かに今の俺は巨根コンプレックスなのかもしれないな……。』

『でもどうせお前も実際目にしたら“あいつら”みたいに引くんだろ。』

自暴自棄なのか“あいつら”への復讐心なのか……それとも期待か気まぐれか……。
とにかく“気になった”だけのそいつに気付けばメッセージを送信していた。
┌――――――――――――――――――――――――┐
│20歳の学生です。                │
│男とは経験ないけど気になったのでメールしました。│
│LIMEのIDは××××…              │
└――――――――――――――――――――――――┘
『何やってんだオレ……』

送信してから押し寄せる後悔。

『また引かれたらどうする?流石にメンタル持たねぇよ。』

“過去の栄光”もしくは“勲章”とでもいうべきか、モテ期に散々使い倒してすっかり黒くなった自分のナニに視線を落とす。

『なんでこんなにデカくなったんだよ』

返ってくるわけはない“ふてぶてしい息子”に虚しく語りかけたその時――。
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『っ!?』

軽い気持ちで送ったメールだが実際返事が来ると少し緊張する。

『何緊張してるんだよ。相手は男だ。別に嫌われたって構わねーじゃん。』
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その後何度かやり取りをした。
やれ身長や体重、体型やら詳しく聞きたがったが体のデカさも言いたくなかったから具体的な数字は書かないではぐらかした。
何かを察したのか“トモ”はそれ以上具体的な質問をしなくなった。

男だと意識しなければ女とやり取りしてるような感覚になるほど、トモは女性的な奴だなと思った。
決して女言葉を使ってるとかそういうことじゃなく、言葉選びの端々に女性らしさが垣間見える。

そんなトモとのやり取りを不覚にも楽しいと感じていた。
久々にモテ期にしていたようなやり取り……いや、モテ期にこんな風に相手のことを考えたことがあったか?
どうでもいいが心が満たされている感覚。
まぁ男には興味はねーが、寂しさを紛らわす暇つぶしにはちょうどいい。
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『なんだ、もう寝るのかよ。』

急にまたいつもの一人の日常に引き戻された瞬間、股間に痛みを感じ目をやる。

「なんだこれ……」

そこにはこれ以上にない程ギッチギチにイキリ勃起したグロテスクなチンコ。
スウェットの腰ゴムを優に通り越し鳩尾を突き上げる亀頭は既に先走りでしどどに濡れていて、身体を動かしただけで触れずとも暴発してしまいそうなほどに。
どうやら返信があったあの瞬間から今までずっと勃起していたらしい。

「中学生かよ。いや、中学生のあの頃よりヤベーよなこれ。」

この日のオナニーは久々に燃えた。

これはAV見るようになって初めて気付いたことだが、俺の射精は並みの奴らと比べ物にならない程量が多い。
一度のオナニーで出す量は小さなクズ籠を並々にするぐらい出るし、その上回数もやたら多い。
授業中とか人目がある場所に居る時は別として、20~30分に一度は出している気がする。
それまでしても寝ている間に散々夢精してるのか、起きた時には部屋中精液だらけだ。
そんなオレでさえ引くぐらい何度も抜きまくった。

結局眠気が勝って床についても尚物足りず、股間の痛みを感じながら眠りについた。
ただ、いつもの単純な処理になり下がったオナニーよりは充実した心地よい満足感があった。

― 転機 ― (気まぐれ、または気の迷い) 了

[chapter:― 王子様降臨 ― (想定外の事態)]

初日のLIMEのやり取りの後も連日ほぼ一日中やり取りは続いた。
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おいおいマジかよ。そりゃガッカリするわな。
オレのモテ期の通常時以下じゃねーか。
今の俺のチンコ見たらどんな反応すんだろうなぁ……。
デカければデカい程いいとか言ってられないぐらいビビらしてやるよ。
……引くのだけは勘弁だけど。
聞けば相当巨根好きらしいし、マッチョも毛深いのも高身長も好きらしい。
オレの事見て言ってるのか?ってぐらいドンピシャだ。
まぁ俺のはちょっと度が過ぎてるが。

ただ数日やりとりしても、ヤツから一向に「会おう」という話が出ない。
てっきり週末会うと思っていたのにもう土曜が終わろうとしてる。
それとなく鎌をかけてみるが、どうやら男に興味のない俺に会ってガッカリされたくないからだとか何とか。
別に俺は気持ち良く出せれば相手が男だろうが構わない。
しびれを切らして俺から誘ってみる。
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あんまり乗る気じゃなさそうな返事は気になるがまぁいい。
どうせ実際に見たらドン引きされてそれきりになるかもしれないし、何より俺が我慢できないから仕方がない。
現に、LIME中にもスマホ片手に一日中抜いてたというのに、会うのが決まった今もそれまでの射精が無かったかのようにガチガチに勃起しているし、寝るギリギリまで抜いても最早治まる気がしない。
このデカさですでに穴への執着は消えた。
ただ人肌を感じながら出したい。ただそれだけだ。

そして迎えた翌朝。
正直一睡もできなかった。
夜通し抜き倒しても尚、いまだに勃起が収まらない。
遠足前のガキじゃあるまいし……男相手に楽しみ?いや抜き足りなかっただけだ。

『最後にあと一回抜いとくか』

そう思い時計に目をやると、今すぐにでも出支度をしなければいけない時間になっていた。

『クソっ』

未だに勃起し続けるナニを何とか服で隠し慌てて家を出る。
最寄りの駅に着いたがヤツはまだ来ていないようだ。
なんだかんだで飛ばしたおかげで5分前には到着していたからまぁしょうがない。
それよりチャリを漕いでいる最中も今も、いまだ勃起が収まらないどころか先走りがヤバイ量出ているようで鳩尾から腹筋の溝を伝って滴り落ちる感触がゾクゾクして気持ち悪い。
5分あれば1発ぐらい余裕で出せるし、先走り処理しないと服に染み出すのも時間の問題。
決して早漏なわけじゃない。絶倫すぎるだけだし。

「一発ぐらい抜いとくか…」

そう思って辺りを見回した時だった。

「あの…陽太くん?」

不意に後ろから声を掛けられる。

「あ、ハイ。そうっす」

意外にも声の主はイケメンだった。
ホモの世界はよく知らないがネットで出会いを求める奴なんて見た目に難があるかよほどのコミュ障ぐらいに思ってたからこんなイケメンが現れるとは思わなかった。

背は若干低いものの、ガリガリ過ぎないしなやかなスリムな体に、程よく女顔で清潔感のある顔立ち。
三十路間近だと知らなければ二十歳そこそこと言われても分からないぐらい若々しい。
雰囲気もチャラいわけでも芋くさいわけでもないこれまた絶妙なオシャレさと清潔感のある服装。
女が思い描く「王子様」を具現化したらこういう感じじゃなかろうか。知らんけど。
大して俺は……。
目鼻立ちは整ってるおかげで不細工とは思わないが、すっかりあどけなさが消えゴツイカつくなった顔はいわゆる“モテ筋”の王道からは外れ、更には7年間性欲を紛らわすために続けてしまった筋トレのせいで人間離れしたごつ過ぎるバルクマッチョになった体躯とそれを更に悪目立ちさせる2Mを優に超す身長のせいで、外を歩けばバケモノを見るかのような目で見られる……。
目の前にいるイケメンとは対極過ぎて同じ性別……というより最早同じ人間なのかすら疑わしくなるレベル。
自分を否定するようで認めたくはないが、俺よりよっぽど女受がよさそう……これで女に興味が無いというのは勿体ない話だ。

想定外過ぎてキョドっている俺をよそにイケメンが続ける。

「想像してたよりも遥かに(体が)大きくてちょっとビックリした」

「あぁ……まぁ。引きました?」

「いや!全然!身長とか体型とか聞いてもあんまり言いたく無さそうだったし、その辺は期待してなかったから……こんなにもすべてが理想以上の人が来てすごく緊張する……
こっちこそ、こんなナヨナヨしたのが来て気持ち悪くない?ってかそもそも男だし……」

顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに俯くイケメン。
……これは嫌味なのだろうか?
その辺歩いてる女に聞いても100対0でアンタの勝ちだろうが。

「いや、イケメンなんじゃないっすか?女じゃないから分からないけど。
 キレイな顔してると思うし」

「えっ、あ、良かった……でもそうだよね、そもそも男に興味が無いんだもんね」

少しの自虐と嫌味を込めて言ったオレの言葉に、目の前のイケメンが不安と安堵が入れ混じる複雑な顔をしている。
素直にイケメンだからOKっすよ!とか言えばよかったか。

「あ、もしこの後……その、触られたりとかした時に気持ち悪いなって思ったら無理しなくていいから……」

んーなんだこの俺よりモテそうなキレイな顔をした男がムサイ男の顔色を窺うこの感じ。
支配欲?満足感?加虐心?
どれもしっくりこない。
ただ何となく

 『可愛いなこいつ』

いやいや、男相手にカワイイとかねーし。
たぶん人肌に飢え過ぎた一瞬の気の迷いなんだと思う。きっとそう。
本当なら今頃目の前のこいつよりも美人で巨乳なねーちゃんと飽きるほどやりまくってたはずで、俺はおっぱいとマンコが好きなんだ。妥協であり理想ではない。
ふと頭の中に沸いた感情を必死で正当化してみる。

いくらイケメンとはいえ当然おっぱいもねぇし、顔がちょっと女顔だからって…
と奴のぷっくりとした柔らかそうな唇が目に入る。
小さな口だ……こんなきれいな唇にオレのグロテスクなチンコは入らないだろうな。

と、急に込み上げてくる射精感。

『ヤバイヤバイヤバイ!!!!漏れっ漏れそう‼‼』

「じゃぁ……どうしようか、適当な場所でお茶でも――?」

「あ、いや、ちょ、ちょっとここでっ!その一旦!すみませんっ‼」

言葉にならない言葉を何とか紡いでその場から駆け出す。
人目なんかを気にしている余裕はもちろんなく、無駄な抵抗だと知りつつも鳩尾付近の異様な膨らみを両手でギュッと握り迫りくる射精を必死で抑え込む。

土地勘のある地元の駅ビルで助かった。
いつムラムラしてもいいように最寄りのトイレは熟知している。
個室の扉を開けるや否や、上着を捲り上げ乱暴にスウェットをずり下げると同時に天井をビタンビタンと何度も何度も打ち付ける大量射精。

しばらく勢いはとどまることが無く、壊れた蛇口のような射精は恐らく2~3分は続いたんじゃないだろうか……。
“お漏らし”をした時のような膝をガクガク言わせる快感を伴う射精に耐え切れず壁に手をつき、余韻の残り汁が脈動に合わせてビュルビュルと噴き出すたびに体を震わす。

自分でも驚くぐらいの射精がようやく落ち着くころ、メッセージが届いていることに気付いた。
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とは言ったものの戻る自信はない。
顔を見たらまた条件反射の様に暴発させる自信がある。
LIMEやり取りしてる間に抜きまくってたせいか?
いくら絶倫だからと言って、パブロフの犬じゃあるまいし。
今までこんなことがあっただろうか?
モテ期の頃の女達とのことを思い出そうとするが思い出せない。
名前なんて知らないし、どんな会話をしたか?体型、雰囲気に至るまで何一つ。

『オレ……今まで“何”とHしてたんだ?』

いや違う。あの頃の俺は気持ちよく出せれば何でもよかった。
それは今回も変わらない。……多分。

「とりあえず……もうちょい出してから行くか」

― 王子様降臨 ― (想定外の事態) 了

[chapter:― 最悪の初対面 ― (捕食者と被食者、イニシアチブの在り処)]

待ち合わせ場所に戻るや否や、イケメンが不安そうに窺う。

「本当に大丈夫?具合悪かった?」

「平気っす。ちょっと腹の調子が悪かっただけっす」

「……男相手で気持ち悪かったなら無理しなくていいんだよ?」

『これは罠か?むしろその男相手に発情しまくったんだよ!』

などと言えるわけもなく――。

「いや、ホント、平気っす」

顔を見ずそっけなく答える俺に、さすがのイケメンも声のトーンが落ちる。
我ながらメチャクチャ感じが悪いと思うがこればかりは仕方がない。
今ヤツの顔をまともに見たら……いや、これ以上想像するのはよそう。
ここは心を無にするしか、今の俺のムスコに抗う術がない。

そんなことを考えていたせいで流れる束の間の沈黙。
俺としてはいっぱいいっぱいだっただけなのだが、そんなことを知る由もないイケメンにとっては、俺の素っ気ない態度の上の沈黙はさぞ気まずかったのだろう。
少し言い淀みながらも決心したかのように――

「やっぱり今日……やめようか」

精一杯の笑顔。
鈍感な俺でもそれが無理矢理作った笑みであることぐらいは分かる。
そしてこの“今日”より先は無いことも……。
あーくそっ!

「っ!?ど、どうしたの……」

「いーから抱かれとけ」

“どうした?”んなこたぁ俺にも分かんねー。
ただ抱きたいと思った。それだけだ。
ただ、抱きしめると同時に俺の愚息はアホみたいに暴発(漏)らしていた。
せっかくカッコ良く決めたと思ったのに……。

イケメンの体は女のように柔らかくはないものの、同じ男であることが疑わしいほど細く小さな体で、人肌に飢えていた俺を興奮させるには十分過ぎる抱き心地だった。
理性が飛びそうになりながらもなんとか肛門にぐっと力を入れ射精を止めようとするが無駄な抵抗だ。
イケメンをきつく抱きしめているおかげで飛び散ることはないが、簡単なパーカーとタンクトップでオレのこの大量射精を留めておくにはあまりにも心もとない。
収まりきれず足元を白く塗りつぶすのも時間の問題だろう。
きっと俺の亀頭が押し付けられているイケメンの顔にも湿り気は伝わっているはずだ。

「っ!?……とりあえず、トイレ行こう。僕の背中で隠しながら――」

そう言うと小さな背中で一生懸命オレの“お漏らし”を隠しながらトイレに向かう。
やっぱり速攻で(漏らしてる事が)バレたようだ。
俺ならこんなところで暴発されたらドン引きして立ち去るかもしれない。
なんだよ、顔だけじゃなくて中身もイケメンかよ。
“飲みに誘った女が泥酔した挙句に吐いた”時、迷わず手で受け皿作れるタイプだな。



トイレに着くとイケメンは何も言わず個室の便座にオレを座らせると、

「じゃあ何か拭くもの持ってくるから」

と扉を閉め立ち去ろうとする。
その間もオレの痴態を視界に入れないように配慮するイケメンっぷり。
一方の俺は個室で人目を避けられた安心感でより射精の勢いを増すクソっぷり。
最早胸の谷間を縫って大量の精液を吹き出し、全身精液まみれだ。
普段のオナニーで出す量よりも量も濃さも勢いも射精時間も多い気がする。
暴発は情けないが快感がいつもよりやばくて腰が立たない。

クソっこんなダセェところばかり見せてらんねー。
どんなにイケメン装っても結局オレのチンコが見たいだけのドスケベホモだろ?
カマトトぶってんじゃねーよ。オレのバカでかいチンコ見てビビり散らせ。

「入れよ……見たかったんだろ?オレの――」

脱力して力が抜けているのを隠すように精一杯の強がりを言い、奴の手首をつかみ強引に個室内に引き入れると、やや衰えたと言えど未だ射精の脈動に合わせてビクビクと揺れる股間の膨らみを見せつけるように視線を落とす。

すでに精液でグショグショに濡れたパーカーはピッタリと竿に張り付き、露骨に形を浮きだたせている。
服を脱がさなくともその大きさを理解するには十分だろう。
いくら巨根好きのお前でも音を上げるほどの“本物”の巨根だろ?

自信満々にやつの顔に視線を戻すと――。

『……笑った?』

それは見間違えたかと思うほどほんの一瞬だった……がヤツは確かに笑っているように見えた。
まるで最高の“ご馳走”を前にして嬉しさを隠し切れないようなキラキラ……いや、恍惚とした“男”の笑み。

この時俺は初めて自分が性的対象として消費される側であることを自覚した。
というより、性的対象として見られる側の立場を認識したというべきか……。
モテ期は近づく女を有り余る性欲の捌け口として――。
モテなくなった高校以降も日々“オカズ”として――。
今まで意識したことなく俺が女に対し向けていた視線。
今目の前にいるこの女顔の弱そうな男が性の捕食者。
そして俺は性の被食者であると。

そう思うと途端に羞恥心が込み上げる。
男同士なんだから裸を見られることなんてどうってことないはずなのに。
意識すんな!男にチンコ見せる。ただそれだけじゃねーか。

「じゃぁ……見せてもらうね」

「お、おぅ。ドン引きして“無理です”って泣き入れてもすることしてもらうからな」

奴の細い指がパーカーのファスナートップに掛かる。
ヂリヂリとゆっくりファスナーの高度が下がるのに反比例してオレの羞恥心が高まるのを感じる。

じれったい。 恥ずかしい。 見るならさっさと見ろ……見ないでくれ。

ヤツの一挙手一投足全てが俺の羞恥心を刺激する。
そんな気持ちとは裏腹に、幾分勢いが衰えた射精が再び勢いを取り戻そうとするのをぐっと堪える。

「なんだよ……焦らしてるつもりか?」

「あ、ゴメン。すごく(アレが)硬く突っ張ってるから……急ぐね」

俺のせいですか?
興奮するのはお前なはずなのに、これ以上ない程ガチガチに勃起してるせいで隠し切れない興奮が見透かされてるようでクソ恥ずい。

「凄いね……」

奴から感嘆の言葉が漏れたのは、ファスナーがようやく下ろし終えた後の事だった。
しかし、まだオレのチンコはタンクトップに覆われていて、布一枚が剥がれたこと以外は状況は変わっていない。

「なんだよ。見るなら直に見ろよ」

そう言いタンクトップを捲し上げようとする手をイケメンに制止される。

「あ、ゴメン。もう少しこの状態を楽しみたいから……
精液で濡れたタンクトップが透けてて……サポーターみたいでエロくって……」

あぁ所謂“着エロ”ってやつだ。下手な全裸よりよっぽどエロイよな。分かる分か……
『!?』

つまりなんだ、今こいつの目に俺は、俺がよく見ている着エロ姿の女と同等のエロい姿に映っているか!?
しかも自分のタイプドストライクの巨乳の女の……。

「触ってもいい?」

「お、おぅ。いいぜ。好きにしろよ」

「……好きに」

あ?なんか小声で……おぅっ!?

ヤツ小さな手がボコボコと血管の浮き上がる裏筋を辿るように下から上に這う。
触っているかどうかすら怪しい力加減で。
そして、俺の特に性感帯となる亀頭に到達する既の所でスっとその手が引かれたかと思うと、ただただうっとりとした表情で嘗め回すように見つめる。

「こんなに大きい人初めて見たよ。先っぽが胸に届いてるし太さもボクの腿より太そう……」

生殺しを受けたオレの愚息は、俺の意思とは正反対に恥ずかし気もなく触感を求めて呼応するようにビクビクとはしたなく蠢く。
ただでさえぼっこりと膨らんだ裏筋や、パンパンに張った亀頭をより一層膨らませながら。

「な、なぁ、もういいだろう?思い切り扱いて逝かせてくれよ……」
「え?今垂れ流してるコレは精液じゃないの?凄い量出てるけど」

確かに。
今ダラダラ垂れながしている精液の量ですら、普通のやつの1回分なんて余裕で越えちゃいるが……。
いや、むしろこんな風に射精が止まらないことなんてオレですら経験したことが無いし、奴に興奮がばれないように必死で我慢してるまである……出てはいるが。

しかしこの我慢もそろそろ限界だ。このままじゃまた盛大に暴発して噴き上げる。
奴の手中に嵌って逝ったなんて思われても癪だし、ここらで俺から仕掛けて俺が本当の捕食者側だと分からせてやる!

再びやわやわと触ろうとするヤツの細い両手首を俺のでかい片手で軽々掴み上げそのまま壁に打ち付ける!
それだけじゃねぇ!
タンクトップを捲し上げると未だダラダラと精液を垂れ流し続ける亀頭でイケメンの顎先を持ち上げる!

ヤツの顔を見るとビビったのか目を丸くして完全に怖気づいてる。
いいぞ……見たかったのはそういう顔なんだよ。
追い打ちにヤツの太ももの間に膝を突き刺し壁を鳴らす!
完全に決まった!
並みのチンコじゃ真似できない俺の得意技、“壁ドン+アゴくい+膝ドン3点止めコンボ”!!

「ほら…しゃぶりてーんだろ?お?」

亀頭で挑発するようにヤツの顎をグイグイと持ち上げる。
3点を抑えられたヤツに拒否権はない。
完全に俺の独擅場だ。

するとさすがのイケメンもビビったのか、怯えたような……それでいて恥部を押し付けられた恥ずかしさからか赤面し視線を逸らす。

ゾクゾクする顔するじゃねーか。
余計な色気なんか出さずにはじめから素直に俺の性処理道具になればいいんだよ。
さぁこれからどう攻め落とsっ!?
どやりの余韻に浸っていた俺の股間に急に快感が走る――。

「っ!?」

視線を下すとやつの舌が俺の鈴口に挿入されている。
待って待って!知らねー!そんな尿道プレイとか知らない!
今完全に俺のターンだろ!?
不意打ちにさらっとイレギュラーな技ぶちかますんじゃねぇよ!
しかも触り方ヤベェ!クソっなんだこの絶妙に逝き切れない生殺し感!

ヤツは舌を尿道に突っ込みながらも、いつの間にか自由になった左右の手を使い大きく張り出した雁の輪郭をまるでマッサージをするかのようにゆっくりなぞる。
決して激しく扱き上げるわけでもなく、あくまで揉み解すように……。

あぁくっそ!思いっきり扱き上げたい!噴き出したい!

「そぉん…なヤワぁ↑なさwっ、触り…方ぁじゃんんんんんっ!ぶっぱなせ ねぇ↑ んっあ だっはぁ よっ!」

「ゴメンね。こんなの凄い人初めてだから……楽しくて♪」

“楽しくて”?

そう聞こえた気がしたが今の俺はとにかくこの生殺しから抜け出して盛大にぶっ放すことしか考える余裕がない。

生殺しに耐え切れず何とか竿をしごき上げようと快感のせいで力の入らなくなった手を伸ばした時、それまで浅い部分をチロチロしていただけのヤツの舌がぐっと奥に入り込み、新しい刺激が加えられると同時に、雁の輪郭をなぞっていた手が亀頭前面の張り出した双丘をそれまでにない速さで撫で上げる。

『イクッ!』

と思ったのもつかの間、舌も手もすぐに元の位置に戻りまたあの緩々とした生殺しの快感を与え続ける。

おかしい……。
絶倫すぎるが故に(ココ重要)早漏気味の俺なら今の一撃で何発も出しているはずなのに!
それどころかさっきまでダラダラと垂れ流していた精液は止まり、代わりにエグイ量の先走りを噴き上げている。
さっきは射精感を無理矢理抑え込んでいたが今はもう何も我慢していないのにだ。
中途半端な快感を持続的に与えられたせいでチンコが馬鹿になったのか……。
普段は性処理になり下がったオナニーで出したい時が来れば出していただけ。
出せれば快感は二の次だった。

快感で膝が立たなくなるほど脱力した俺は再び便器に腰を落とす……。
そのせいで奴の口や手が離れ、決定打には成り得ない緩々とした刺激ですら失う。
しかし、触れられてもいないチンコはまるで空打ちするかのように、虚無に向かってその巨大な砲身を震わしている。

「ゴメンね、逝かせてあげられなかったみたい……」

そうじゃない。逝ってるのに逝ってないんだ。意味わかんねーどうでもいい出したい!

「キス……してもいいかな?」

『もういい!お前に触れられるならチンコじゃなくても唇でもなんでもいいから!』

力なく頷く俺に、奴の顔が……柔らかそうな唇が迫ってくる。
早くっ!
俺に人肌をっ!

奴の唇が俺の唇に触れそうになったその瞬間

ビュル!ビュッ!ビュババ!ブドドドドドドドっ!!!!
イケメンに会ってから2度目の大量射精。
1度目の射精でさえいつものオナニーと比べ物にならない量出してたと思うが、
そんな射精と比べてもぶっちぎりの量だ。
こんだけの量を出しているというのにその精液はデロデロと半固形で呆れるほど濃い。

情けねぇ……結局2度とも暴発かよ……。
今日いいとこ無しじゃねぇか……。

ぶっ壊れた蛇口みたいな射精は3分以上経ってようやく衰えを見せ始める。
理性や思考などをとうに放棄したまま、未だ情けなくビュルビュルと射精し続けるバカになった亀頭をボーっと見つめていると、ふとイケメンが居なくなったことに気付く。

あれ?なんだこのヤリ捨てられた感。
ヤツが俺を欲していたはずだろ?逝かせれば満足、ハイさよならか?
ずいぶんあっけねーんだな。
あぁ俺がモテ期にしていたのはこういうことだったのか。
まぁいいか。気持ちよく出せれば満足なのは俺も一緒だったじゃねーか。
どーでも……

コツ コツ コツ

誰かが近づいてくる足音が聞こえてくる。
やべぇ。臭いでバレねぇか?今この精液まみれの惨状を他人に見られたらさすがにヤベェ。せめて鍵閉めねぇと……あぁでも腰が上がんねぇ。

扉が静かに開かれる。

「もう納まった?あ、まだちょっと出てるんだね。」

ヤツだった。

「いやぁ~びっくりしたよ。こんなにたくさん出るなんて思わなかったから。ホント凄いんだねぇ。うわっこんなブリッブリの精液初めて見た!ヨーグルトみたいだねぇ。いつもこんなに濃いの?」

「……」

「そうだね、片付けないとねwあ、着替え買ってきたよ。サイズ合わないかもしれないけど我慢してね。立てるようになったら着替えてね」

俺ならこんな“ヤラカシ”の尻ぬぐいなんてゴメンだ。
なのにヤツは何故か嬉しそうに精液だらけになったトイレをテキパキと片付ける。
時折俺の様子を窺うようにこちらに目をやり、目が合うとニッコリと微笑み作業に戻る。
ドン引きして放置されてもいいぐらいなのに……これまでの女がそうであったように。

「戻ってきたんだな」

「……ん~?何のこと?」

片付けをする手は止めず、こちらを見ることもなく楽しそうに答えているようにも聞こえるが……少し声のトーン落ちたか?
いや、気のせいか。

「それよりこの後まだ時間ある?ラーメンでも食べにいく?」

「ん……まぁそうだな」

すると突然イケメンが振り返り満面の笑みを浮かべる。

「うん!じゃあ早く片付けないとね!」

はぁ~?クッソ可わ……可愛いかよ!
憎たらしいほど俺を生殺しにしたドSなクセに。イケメンで男なクセに。



カワイイとか意味わかんねー。パニくるわ。

― 最悪の初対面 ― (捕食者と被食者、イニシアチブの在り処) 了

[chapter:―エピローグ― (イケメンは性格が悪い)]
結局イケメンと会った日はラーメンを食べた後、喫茶店で小一時間話して別れた。
俺としては家に連れ込んで昼間の惨敗のリベンジをしてやっても良かったんだが、あんまりガツガツして嫌わ……違う。嫌われても構わないがまぁこれからいつでも会えるだろうし、まぁ負けてやったって感じだ。

あれからイケメンを思い出してはオナニーをした……あくまで、またすぐに暴発しない為の復習としてだが、回数が増えるばかりであの時のような快感は得られなかった。
出し過ぎのせいかと思って小一時間我慢もしてみたが、量が増えるだけであの脳がとろけるような気持ち良さには至らなかった。

そんなことより気掛かりなのが……

イケメンから連絡がこない。

まぁ別に、次に会う約束をしたわけじゃないし、そもそも継続したセフレを求めてたわけじゃない。
あいつはでかいチンコが見たかっただけだし、俺は気持ちよくいければよかっただけ。
連絡がこなくても何ら不思議なことではない。



なんだよ……。
大体なんで俺があいつなんかにこんな悶々としなきゃなんねーんだよ。
あいつに固執する必要なんてないだろ。
男だし。
そりゃ顔はまぁ男にしては無しじゃないっつーか下手な女よりカワイイ……。
いやでも体は?あいつも男ならチンコついてるわけだろ?
でも抱き心地はまぁ悪くなかったし小さくてスリムで……何より俺のチンコみて引くどころか喜んでくれたし。
その上舌……。
いやいやでもあいつ寸止め好きのS気ありだし!クソ気持ちよかったけど……。

ふと携帯を見るがまだ連絡はない。もう月曜が終わろうというのに。

「たぶんあれだな、欲求不満なだけだ。オナニーして寝る。忘れる。」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そして火曜日。
釈然としない気持ちのまま大学の授業を受けるが、モヤモヤを払拭できないせいか身が入らない。
教室一番後ろの窓際の席、机に突っ伏し窓の外をボーっと眺める。

『あいつ今仕事中かなぁ……』

と、スマホのバイブが鳴る。
気怠くスマホを取り出し通知に目をやる。

ヤバイ。
何故か股間に血が集中していくのが分かる。
心拍数が上がる。
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クソっなめやがって。
おかげでチンコギンギンじゃねーか。

と、ふと講師から声を掛けられる。

「おー加藤、彼女とメールか?柄にもなくデレデレした顔して。
 そんなリア充にはこちらの設問に答えてもらいます」

はぁ?デレデレじゃなくてムカムカだし。意味わかんね。

「すみません、その前にトイレ行ってきていいっすか?」

「ほどほどにしとけよー」

奴から連絡が来ても結局釈然としなかったが……まぁ悪くない。
“次”か……マジ覚えとけよ。

「ヤリチン童貞 第一章 終わり」
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[chapter:あとがき]
最後まで駄文にお付き合いいただきありがとうございました。
よろしければ感想等頂けると幸いです。
また、評価の一つの指針になりますので気に入っていただけたらお手数ですがブクマ等していただけると幸いです。

今回のSSはTwitterの質問箱にリクエストいただいた案をもとに書かせていただいたのですが、私がこの「陽太」のようなオラオラ系ヤリチンを全く好きになれないので、面白いと思っていただけたるSSを書けたか分かりませんが、貴重な経験になりました。
続きを書くかどうかは決めていないというか今の所書く気はないです。(;^ω^)
※続き書き始めました。アップに至るか分かりませんが(06/13)

また、明確にリクエストは受け付けていませんが、ちょっとしたアイディアなどはTwitterのリプ、質問箱等でも受け付けておりますのでお気軽に。
必ず書くとはお約束できませんが、私のフェチに刺さったら書こうかなぐらいの気持ちですがよろしければ。
Twitter:[[jumpuri:@kondou_oone > https://twitter.com/kondou_oone]]
質問箱:[[jumpuri:質問箱へジャンプ > https://peing.net/ja/kondou_oone]]

ではでは
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<パソコン版でブックマークを付ける方法>
もし知らない人がいたらと思ったので。
・方法1
[pixivimage:83997109-1]
・方法2
[pixivimage:83997109-2]